YASとFAFは、国際物流の航空貨物に関連する追加料金を指します。
1. YAS(Yen Adjustment Surcharge)日本発着の航空貨物に適用される円調整サーチャージです。為替レートの変動に伴うリスクを調整するため、航空運送業者が日本円と外国通貨の為替レート変動の影響をカバーする目的で導入しています。
2. FAF(Fuel Adjustment Factor): 燃油サーチャージとも呼ばれ、燃料価格の変動に対応する追加料金です。燃料費が航空輸送のコストに大きな影響を与えるため、燃料価格の上昇・下落に応じてFAFが調整されます。
これらの料金は、基本運賃に追加され、物流業者や航空会社が変動するコストをカバーするために導入されました。
海上輸送におけるYASとFAF
海上輸送においても同様の追加料金が存在しますが、異なる名称が使われます。
1. BAF(Bunker Adjustment Factor): 航空貨物でのFAFに相当するもので、船舶の燃料(バンカー燃料)の価格変動に対応した追加料金です。燃料価格が変動する際に運送会社が適用し、燃料コストを補填します。
2. CAF(Currency Adjustment Factor): 航空貨物のYASに似ており、為替変動によるリスクをカバーするための料金です。運賃が特定の通貨で設定されている場合、その通貨の価値が変動すると、CAFが適用されます。
誰がこの追加料金を導入したのか
これらの追加料金(BAFやCAF)は、主に海上輸送を行う運送会社(船会社)が導入しました。特に1970年代の石油危機の際、燃料価格が急激に変動したことで、船舶の運行コストに大きな影響が出ました。このリスクを補填するため、運送会社はBAFを導入し、燃料価格の変動リスクを荷主と分担する仕組みを整えました。同様に、為替レートの変動に対応するためにCAFが設定され、運送業者がリスクを管理する手段として定着しています。
導入時の荷主の反対
BAFやCAFが導入された当初、荷主からの反発がありました。主な理由は以下の通りです。
1. コスト負担の増加: 追加料金は荷主にとって直接的なコスト増加を意味します。特に運送契約時に運賃が固定されていた場合、後から追加料金が発生することに不満がありました。
2. 透明性の欠如: 追加料金の計算方法が不明瞭で、運送会社がどのようにしてその料金を決定しているかが不透明だと感じる荷主が多くいました。
3. 料金の一貫性の欠如: サーチャージの金額は運送会社ごとに異なり、荷主にとって予測が難しいため、コスト管理が困難になるとの批判もありました。
荷主の反応と現状
導入当初は反発がありましたが、最終的に荷主は受け入れざるを得ない状況となりました。業界全体でBAFやCAFが標準化され、主要な運送会社がほぼ全て同様の料金を設定したため、どの運送会社を選んでも追加料金を支払わなければならない状況が生まれました。現在では透明性が向上し、荷主もこれらの追加料金を予測しやすくなり、料金体系の一部として定着しています。
透明性のある指標
現在では、BAFやCAFに関して透明性のある指標や計算基準が導入されています。
1. BAFの指標: 主に船舶燃料の市場価格(バンカー燃料)に基づき、燃料価格の上昇・下落に応じて料金が調整されます。主要港(ロッテルダム、シンガポール、ヒューストンなど)の価格データを元に設定されます。
2. CAFの指標: 為替レートの変動に基づき、運賃設定時の基準レートと実際の為替レートの差異によって料金が調整されます。大手金融機関のインターバンクレートなどが指標となります。
計算式や市場データの公開により、運送会社と荷主との間で透明性が高まり、料金の予測が可能になっています。
運送会社が燃料価格や為替レートのデータをどのソースから取得しているかを公開している場合もあり、これにより顧客はそのデータを確認し、サーチャージの妥当性を確認することができます。
これらの透明性向上の取り組みによって、荷主が追加料金の根拠を理解しやすくなり、料金に対する信頼感が高まっています。
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