原産地証明書とは?一般COOと特定原産地証明書は別物です
「原産地証明を出してください」と言われたとき、まず確かめるのは種類です。各地の商工会議所が出す一般COOと、日本商工会議所が出す特定原産地証明書は、根拠も窓口も別。関税を下げたいのか、輸入国の要求に応えたいのかで行き先が変わります。貿易登録、原稿は誰が書くのか、船積み後の期限まで実務の順序で整理します。
2025年9月6日公開 / 2026年8月 全面改稿
「原産地証明書を出してください」
取引先からこの一文が届いたとき、それだけでは動けない。原産地証明書という名前の書類は、一種類ではないからだ。
根拠になる法律が違い、発給する団体が違い、申請の窓口が違い、必要な書類も違う。それでいて、どちらも日本語では原産地証明書と呼ばれ、英語ではどちらもCertificate of Originになる。
だから最初にやることは、書類を集めることではない。相手がどちらを指しているのかを確かめることである。ここを間違えると、揃えた書類が丸ごと無駄になる。
目次
- 二種類ある、というのが最初の分かれ道
- 一般原産地証明書——「どこの国のものか」を示す
- 特定原産地証明書——関税を下げるための書類
- 自分で申告する方式が増えている
- 貿易登録という、最初の一手間
- 原稿を書くのは、申請する側である
- 船積みのあとでも間に合う。ただし期限がある
- インボイスと、一字一句そろえる
- 展示会の荷物には、原則として要らない
- 農林水産品と酒——「原産地」と名のつく別の制度
二種類ある、というのが最初の分かれ道
先に結論を書く。
一般原産地証明書(非特恵原産地証明書)。各地の商工会議所が発給する。輸入国の法令やL/C、取引条件で「原産国を証明しろ」と求められたときに取る。関税は下がらない。
特定原産地証明書。日本商工会議所が発給する。経済連携協定、いわゆるEPAに基づいて関税を下げるための書類である。
紛らわしいのは、どちらも商工会議所という名前がつくところだ。だが各地の商工会議所と日本商工会議所は別の組織で、登録も申請システムも別立てになっている。東京商工会議所に貿易登録したからといって、特定原産地証明書が出せるわけではない。
分かれ目は「関税」の一語にある。関税を下げるために出すのが特定原産地証明書、または後述する自己申告で、原産国を示すことだけを求められているなら一般原産地証明書になる。相手のメールに Certificate of Origin としか書かれていないことは珍しくない。輸入者に「関税の優遇を使うのか」と一言確かめれば決まる話で、ここは推測で進めるところではない。
一般原産地証明書——「どこの国のものか」を示す
まず一般のほうから見る。
これは輸出する貨物が日本産であることを、商工会議所という第三者が証明する書類である。関税とは関係がない。輸入国の法令が求めていたり、信用状の条件に書かれていたり、単に取引先の社内規程だったりする。
申請できるのは、輸出申告を行う事業者、つまり輸出者本人だ。そして日本に所在していること。商社が間に立つ場合、誰が申請者になるのかは案件ごとに整理しておいたほうがいい。
必要な書類は、意外なほど少ない。東京商工会議所の場合で三点である。
- 証明依頼書
- 原産地証明書(申請企業が作成した原稿)
- コマーシャルインボイス
パッキングリストやHSコード、船積み情報は、あれば申請がスムーズになる資料であって、必須書類そのものではない。ここは案件と商工会議所によって運用が違うので、事前に確認したほうが早い。
特定原産地証明書——関税を下げるための書類
もう一方は、性格がまるで違う。
これはEPAの特恵関税を使うための根拠書類だ。輸入国の税関に対して「この品物は協定上の原産品だから、税率を下げてほしい」と主張するために出す。
発給するのは日本商工会議所である。根拠は「経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律」で、経済産業大臣が指定した指定発給機関という立場にある。正式には第一種特定原産地証明書という。
一般のほうとの決定的な違いは、中身の審査があることだ。
一般原産地証明書は「日本産です」という申告を証明する。対して特定原産地証明書は、協定ごとに定められた原産地規則を満たしているかどうかが問われる。完全生産品なのか、実質的変更基準を満たすのか、付加価値基準をクリアするのか。
だから提出資料も重くなる。製造工程、材料の内訳、原価計算。原産品であることを説明できる資料が要る。
そしてこれは、輸送を手配する側には作れない。 何がどこから来て、どう加工されたかを知っているのはメーカーだけである。ここが実務でいちばん時間を食うところで、初めての品目なら数週間単位で見ておいたほうがいい。
自分で申告する方式が増えている
ここが、この数年で一番変わった部分だ。
原産地証明の方式は、大きく三つある。
第三者証明。日本商工会議所のような機関に出してもらう。上に書いた特定原産地証明書がこれにあたる。
認定輸出者による自己証明。あらかじめ認定を受けた輸出者が、自分で原産地の申告をする。
自己申告。輸出者、生産者、または輸入者が、自分で原産品申告書を作る。第三者の発給を経ない。
そして重要なのは、新しい協定ほど自己申告に寄っていることだ。CPTPP、日EU、日英、日米。これらには特定原産地証明書という制度そのものがない。商工会議所に申請しようとしても受け付けてもらえない。自分で申告する以外の道がない。
一方で従来のアジア各国との二国間協定などでは、特定原産地証明書が使える。近年はそこにも自己申告が併用できるようになってきていて、選べる場面が増えている。
つまり「EPAだから商工会議所」も「EPAだから自己申告」も、どちらも間違いになりうる。協定ごとに違う。 迷ったら税関のEPA原産地センターやEPA相談デスクに聞くのが確実で、この種の照会は本来そのために用意されている窓口だ。
自己申告が楽そうに見えるかもしれないが、審査してくれる第三者がいないということは、判断の責任がこちらに残るということでもある。あとから否認されれば追徴されるのは輸入者だ。書類を作らなくてよくなった代わりに、根拠資料を保存しておく義務が重くなっている。
貿易登録という、最初の一手間
見落とされやすいのがここである。
原産地証明をはじめとする貿易関係証明は、申請する前に登録が要る。飛び込みで窓口へ行っても受け付けてもらえない。
各地の商工会議所で必要なのが「貿易関係証明申請者登録」、通称貿易登録だ。有効期間は登録日から2年。東京商工会議所の場合、会員は無料、非会員は16,500円(税込)となっている。金額と運用は商工会議所によって違うので、地元の会議所で確認してほしい。
特定原産地証明書のほうは、初回のみ日本商工会議所に企業情報を登録する。こちらは無料で、有効期間は2年である。
どちらも「証明書が要る」と分かってから始めると、その分だけ遅れる。 初めて輸出する会社であれば、貨物の話より先に済ませておく類の手続きだ。
原稿を書くのは、申請する側である
一般原産地証明書で、初めての人がいちばん驚くのがこれだと思う。
必要書類の二番目、「原産地証明書(申請企業が作成した原稿)」。つまり証明書の中身は自分で書く。商工会議所が代わりに作ってくれるわけではない。
商工会議所がやるのは、提出された原稿と裏付け書類を照らして、証明印を押すことである。品名も数量も金額も、書くのは申請者だ。
だから、間違いを持ち込めば、そのまま証明されてしまう。 次の項が重要になるのは、この構造のためである。
船積みのあとでも間に合う。ただし期限がある
「船が出てしまったが、いまから取れるか」という相談は多い。
取れる。東京商工会議所の場合、船積みから6か月以内であれば、輸出前と同様に申請できる。
ただし上限もある。船積みから1年を超えた輸出品については、申請できない。
だから、慌てなくていい場面と、本当に手遅れになる場面がある。出港した翌週なら落ち着いて手配すればよく、一年前の出荷分をいまさら証明することはできない。過去分をまとめて求められたら、この線を先に確認したほうがいい。
なお、船積み前に申請する場合はインボイスとパッキングリストが中心になり、B/LやAWBは必須ではないことが多い。ただしL/Cの条件で「原産地証明書に船名とB/L番号を記載せよ」と指定されていたり、中東などで領事認証を求められる過程でB/Lの写しが必要になったりすることはある。要求元がどこかで、必要書類が変わる。
インボイスと、一字一句そろえる
実務でいちばん多い差し戻しの理由が、記載の不一致である。
品名、数量、重量、金額、インボイス番号、発行日。原産地証明書とインボイスは、完全に一致していなければならない。 一致していない書類は、輸入国側で止まる。
特に事故になりやすいのが、船積み前に申請したときだ。申請時点の予定と、実際の船積みの内容がずれる。数量が変わる、船が変わる、日付が動く。証明書だけが古い情報のまま残る。
HSコードも同じで、証明書の申請、インボイス、そして輸入申告。この三つでコードがずれていると、優遇が効かないことがある。
書類は単体では正しくても、束として矛盾していれば通らない。 ここは早い段階で一度、全部を横に並べて突き合わせる時間を取る価値がある。
展示会の荷物には、原則として要らない
私たちの本業に引きつけると、この話になる。
展示会への一時持ち込みは、ATAカルネが基本である。カルネは再輸出を前提にした通関手帳で、原産地証明書とは目的がまったく違う。カルネがあるからCOOが不要、という関係でもなければ、その逆でもない。並列の別制度だ。
実務上、展示品にCOOが求められることは多くない。ただしゼロではなく、主催者や取引先が求めてくることがある。その場合は一般原産地証明書で対応する。会場で商談がまとまって現地で販売する、という展開になれば、そこから先は通常の輸出取引なので当然必要になりうる。
両方求められる可能性を、最初から想定に入れておく。 カルネの話をしているときに「ところでCOOは」と聞かれて慌てないためである。
カルネそのものについてはATAカルネはなぜ生まれたのかに書いた。
農林水産品と酒——「原産地」と名のつく別の制度
食品や酒を扱っていると、ここまでの話とは別の「原産地」に行き当たる。名前が似ているだけで、まったく違う制度である。
地理的表示(GI)は、書類ではなく名前の権利
「神戸ビーフ」「夕張メロン」「灘五郷」。地理的表示、GIと呼ばれる制度だ。
これは産地の名前そのものを保護する仕組みで、一種の知的財産である。COOとの決定的な違いは、貨物ごとに発行する書類ではないことだ。COOは出荷のたびに取る。GIは品目と産地の単位で登録され、基準を満たす生産者が共有する。
そして日本では、この制度が二つに割れている。
農林水産品のGIは農林水産省の所管で、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」、いわゆるGI法に基づく。2014年にできた法律で、生産者団体が農林水産大臣に申請し、審査を経て登録される。
酒類は、このGI法の対象外である。 酒類の地理的表示は国税庁の所管で、酒税法に基づく「地理的表示に関する表示基準」が根拠になる。産地が申請し、国税庁長官の指定を受ける。「灘五郷」が指定されたのは2018年6月28日である。
同じ「地理的表示」という言葉で、根拠法も申請先も別。酒を扱うなら国税庁、それ以外の農林水産品なら農林水産省。 ここを取り違えると、そもそも受け付けてもらえない。
食品の輸出には、第三の「産地証明」がある
もうひとつある。農林水産物や食品を輸出するとき、相手国の規制に基づいて求められる証明書だ。
産地証明書、放射性物質検査証明書、衛生証明書。2011年の原発事故以降、輸出先の国や地域によって、どの県で生産されたものか、放射線量はどれくらいか、といった証明を求められることがある。畜産物や水産物では、相手国の要求で衛生証明書や施設認定が必要になる場合もある。
これらは商工会議所では出ない。 農林水産省や都道府県、指定を受けた検査機関といった別のルートで発行される。
つまり、行き先は一つではない
ここまでを踏まえると、「原産地の証明を出してください」と言われたとき、可能性は少なくとも三つある。
- 一般原産地証明書 — 各地の商工会議所
- EPAの特恵を使うための証明 — 日本商工会議所、または自己申告
- 相手国の食品規制に基づく産地証明 — 農林水産省などのルート
そしてGIは、そもそも書類を出す話ではない。名乗ってよい名前の話である。
同じ日本語が、四つの違うものを指している。 だから最初に聞くのだ。何のために、どこへ出す証明なのか、と。
おわりに
原産地証明書は、地味な書類である。関税を下げる以外に華のある役割はないし、取ったところで褒められもしない。
ただ、これがないと荷物が動かない場面がある。動かないと分かるのは、たいてい相手国に着いてからだ。船の上でも港でもなく、輸入通関という、こちらから手を出せない場所で止まる。
だから面倒でも、出す前に確かめる。どちらの証明書なのか、誰が申請するのか、資料は誰が作るのか。順番を守れば、難しい書類ではない。
厄介なのは書類そのものではなく、要ると気づくのが遅いことのほうである。
参照
- 経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律(日本商工会議所=経済産業大臣指定の指定発給機関)
- 日本商工会議所「EPAに基づく特定原産地証明書発給事業」
- 東京商工会議所 証明センター 原産地証明に関するQ&A(必要書類・貿易登録・船積み後の申請期限)
- 財務省 税関「EPAの自己申告制度を利用した日本からの輸出について」/EPA原産地センター
- 経済産業省 貿易管理部 原産地証明関連資料
- 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(GI法)/農林水産省 地理的表示(GI)保護制度
- 酒税法に基づく「地理的表示に関する表示基準」/国税庁 酒類の地理的表示一覧
- 農林水産省「食品等に係る諸外国への輸出に関する証明書発行等について」