原産地証明書(COO)とは?展示会・輸出実務で迷わない基本とチェックリスト
- Pacific

- 9月6日
- 読了時間: 5分

対象読者:海外営業/貿易実務/展示会ロジ担当(初~中級)
この記事でわかること
原産地証明書(COO)の目的と種類
いつ必要で、誰が発行するのか
申請に必要な書類(一般COOとFTA/EPAでの違い)
B/LやAWBは必要?展示会・ATAカルネとの違い
失敗しないチェックリストとよくある質問
1. 原産地証明書(Certificate of Origin, COO)とは
輸出品がどこの国で生産(または実質的に加工)されたかを公的に証明する書類です。主な目的は次の2つ。
関税優遇(FTA/EPA):協定に基づき関税を引き下げまたはゼロにする。
通関・取引要件の充足:輸入国法令やL/C(信用状)で添付が求められる場合に対応。
注:ATAカルネは「一時輸入」用の通関手帳で、原産地証明とは別物です。
2. 種類(ざっくり整理)
2-1. 一般(非特恵)原産地証明
関税優遇を狙わず、原産国の表示・確認を目的とするもの。日本では各地の商工会議所発行が一般的。
2-2. 特恵(FTA/EPA)原産地証明
協定ごとの原産地規則を満たした場合に適用。方式は協定により以下のいずれか(または併用)。
指定機関発給の専用様式(例:EUR.1などの協定フォーム)
輸出者の自己申告(原産地声明):認定輸出者制度等を利用
3. 誰が発行する?
一般COO:各地の商工会議所が発給。
FTA/EPA:協定ごとに異なる。指定機関発給または輸出者自己申告のいずれか
4. いつ必要になる?
関税優遇を使いたいとき(FTA/EPA適用)
L/Cや相手先条件にCOO添付が明記されているとき
地域・国特有の要件(例:中東など一部で領事認証を要求)
5. 申請に必要な書類(基本)
5-1. 一般COOで通常求められるもの
インボイス(発行日・番号・品名・数量・金額)
パッキングリスト(重量・容積)
HSコード(貨物分類)
船積み情報(分かれば)
5-2. FTA/EPAで追加されやすいもの
原産判定資料(製造工程、材料内訳、原価計算書など)
原産地規則に関する根拠(完全生産、実質的変更、付加価値基準 等)
記録保存体制(自己申告の場合は特に重要)
6. B/LやAWBは必要?(よく聞かれるポイント)
結論:発給の“必須”ではないことが多いです。ただし例外あり。
例外・注意点
L/C条件で「COOに船名・B/L No.・積載日記載」などの指定がある。
領事認証(中東等)でB/L写しの提出を求められることがある。
EPAの直接輸送要件の証明でB/Lが裏付けになることがある。
実務TIP:出荷前に申請する場合はまずインボイス/PL中心で申請。出荷後に出たB/L情報と整合(船名・日付・番号)させましょう。
7. 展示会貨物とATAカルネの関係
展示会への一時持込みはATAカルネが基本。COOは原則不要ですが、相手先が要求するケースはあります。その場合は一般COOで対応。カルネとCOOは役割が違うため、両方求められることも想定しておきます。
8. よくある略語の誤解
WO = Work Order(作業指示書):COO発給の必須書類ではない。ただし原産判定の参考資料として使えることはある。
W/O = without(〜なし):L/Cや相手先指示に出てくる省略表現。解釈ミスに注意。
9. 申請の流れ(一般的なステップ)
要件確認:仕向国・協定の有無・取引条件(L/C等)
書類準備:インボイス/PL/(EPAなら)原産判定資料
発給申請:商工会議所または協定の指定方式に沿って申請
受領・整合確認:インボイス・B/L(必要時)・COOの記載一致
相手先提出/通関:必要に応じて領事認証手配
10. 失敗しないコツ(チェックポイント)
インボイスとCOOの完全一致(品名、数量、重量、金額、発行日/番号)
HSコードの整合(申請・インボイス・輸入申告でズレない)
原産地規則の理解(協定ごとに基準が違う)
期限管理(協定に“積送後○日以内発給”などの制限がある場合)
領事認証の要否(地域要件を事前確認)
11. 英文ひな形(コピペOK)
COO要求文:
We kindly request a Certificate of Origin issued by the Chamber of Commerce, indicating Japan as the country of origin, matching the commercial invoice no. XXXX dated YYYY-MM-DD.
EPA原産地声明(例文・要調整):
The exporter of the products covered by this document declares that, except where otherwise clearly indicated, these products are of preferential origin under the [Agreement Name].
※協定名や輸送情報、品名・数量は案件ごとに差し替えてください。商工会議所の担当の方やご利用するサービス担当の方と必ず確認して調整ください。
12. まとめ
COOは原産国を証明するための基本書類。一般COOとFTA/EPAで要件が異なります。
B/L/AWBは原則不要ですが、L/C・領事認証・EPAの直接輸送などの事情で必要になる場合があります。
展示会貨物ではATAカルネが基本。必要に応じて一般COOを追加。
付録:COO申請チェックリスト
仕向国/協定有無(FTA/EPA)を確認した
インボイス(番号・日付・品名・数量・金額)を確認した
パッキングリスト(重量・容積)を確認した
HSコードの整合を確認した
(EPA)原産判定資料を準備した(工程・材料・原価)
L/C条件にあるCOO記載事項(船名・B/L No. 等)を確認した
領事認証の要否を確認した
B/L/AWBが必要な場合、COOとの記載整合を確認した
期限(発給・提出)を管理した
FAQ
Q1. 商工会議所の一般COOとEPA用のCOOは同じですか?
いいえ。目的・根拠・書式が異なります。一般は原産国表示、EPAは関税優遇の根拠です。
Q2. 出荷前でも申請できますか?
可能です。出荷後にB/L情報が出たら、必要に応じてCOOの記載と整合させてください。
Q3. 展示会の一時輸入にCOOは要りますか?
原則はATAカルネで十分です。ただし取引先や主催者がCOOを求めることがあるため、一般COOを併用するケースがあります。
Q4. WO(Work Order)は必要書類ですか?
必須ではありません。ただし原産判定の参考資料として使える場合があります。



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