インドのPANとは|納税者番号が1975年に法律になり、2017年に輸出入者コードそのものになるまで
PANはインドの所得税の番号である。法律に書かれる前から番号は配られていて、1995年に10桁の英数字とラミネートカードに置き換わった。2017年、DGFTは輸出入者コード(IEC)を廃してPANをそのまま使うと決めた。展示会の貨物には、PANと同じ形をした固定のコードがある。
2023年11月20日公開 / 2026年10月 全面改稿
PAN(Permanent Account Number)は、インドの所得税当局が納税者に付ける10桁の英数字の番号である。個人にも法人にも付く。
税の番号が、なぜ国際物流の話に出てくるのか。インドでは2017年から、輸出入をする事業者の番号(IEC)がPANと同じものになっている。税の番号と貿易の番号が、一本になった。
そこに至るまでの経緯は、番号が法律より先にあったところから始まる。
目次
- 法律より先に、番号があった
- 1995年7月1日、「新シリーズ」
- 10文字の読み方
- 番号を配る仕事
- 2017年、IECがPANになった
- 展示会の貨物には、決まったコードがある
- GSTINの中にもPANがいる
- 2025年の新しい所得税法
法律より先に、番号があった
PANが所得税法に条文として入ったのは、1975年の税法改正法(Taxation Laws (Amendment) Act, 1975)による。1961年所得税法に第139A条が挿入され、1976年4月1日に施行された。
ところが、この条文にはこういう一項があった。この改正法の施行前に納税者に割り当てられたすべての永久口座番号は、中央直接税委員会(CBDT)が定める日から、この条の規定によって割り当てられたものとみなす——。
つまり番号は、条文ができる前からすでに配られていた。CBDTは1976年4月1日付の告示で、その日をもって、それ以前に割り当てられた番号はすべて第139A条によるものとみなす、と定めている。
インド所得税局の沿革のページは、PANの考え方が導入された時期を1970年代としていて、年までは書いていない。いつ最初の番号が振られたのかを一次資料で確かめることは、できなかった。
当時の定義は短い。PANとは、査定官が識別のために誰かに割り当てることのできる番号、である。
この頃、PANと並んでもう一つの番号が使われていた。GIR番号(General Index Register Number)である。査定官が自分の管理する総合索引簿に記載するときに付ける番号で、その査定官の担当区(ward、circle、range)の名称と内容を含む、と定義されていた。PANがまだ割り当てられていない者は、PANが付くまでGIR番号を記載すればよかった。
GIR番号は、担当する査定官の帳簿の番号である。納税者の側から見れば、担当区が変われば番号も変わりうる。PANの「Permanent」という言葉がこの対比を意識して付けられたのかどうかは、条文からは読み取れない。
1995年7月1日、「新シリーズ」
1995年の財政法(Finance Act, 1995)第30条は、所得税法第139A条を1995年7月1日付でまるごと差し替えた。
新しい条文には、こういう定義が入った。
"permanent account number under the new series" means a permanent account number having ten alphanumeric characters and issued in the form of a laminated card.
「新シリーズのPAN」とは、10文字の英数字からなり、ラミネートカードの形で発行されるPANをいう。
番号の形だけでなく、カードという物理的な形まで法律の定義に書き込まれた。
差し替え後の第139A条には、旧番号の持ち主が新シリーズの番号を申請すべき日を委員会が定める規定が置かれた。新シリーズの番号が割り当てられたら、それまでの番号は効力を失う。
切り替えは都市ごとに進んだ。1996年5月30日の告示は、デリー、ムンバイ、マドラスの首席長官の管轄で新シリーズ以外のPANを持つ者に、1996年6月1日から30日以内の申請を求めている。その後も告示が重ねられ、1998年4月と6月の告示で残りの切り替えが定められた。
所得税局の沿革のページは新シリーズの導入を1994年としているが、法律上の日付は1995年7月1日である。
10文字の読み方
新シリーズのPANは、AAAAA9999A の形をしている。所得税局の説明による内訳は次のとおり。
最初の3文字は、AAAからZZZまでのアルファベットの連番。
4文字目は、PANの持ち主の種別を表す。Pは個人、Cは会社、Hはヒンドゥー合同家族(HUF)、Fは組合(Firm)とLLP、Aは人の集合体(AoP)、Bは個人の団体(BOI)、Gは政府機関、Jは人為的な法人格、Lは地方自治体、Tは信託。
5文字目は、個人なら姓の頭文字、個人以外なら名称の頭文字。
6文字目から9文字目は、0001から9999までの連番。10文字目はアルファベットのチェックデジットである。
EUのEORI番号は、先頭2文字で登録国が分かるだけで、残りは一意であること以外に意味を持たない。DUNS番号は9桁の数字で、番号から読み取れる情報はない。それに対してPANは、番号の中に持ち主の種別と名前の頭文字が埋め込まれている。4文字目を見れば、個人の番号か会社の番号かが分かる。
番号を配る仕事
PANの発行事務は、2003年から外部に委ねられた。インド勅許会計士協会(ICAI)の告知によれば、所得税局は2003年7月1日から、PANに関する業務の一部をUTI Investor Services Ltdに委託した。PANのデータベースの所有権は所得税局が持ち続けた。
その前年の2002年、税務行政に関するケルカー・タスクフォースが報告を出している。インドの2002-03年度経済白書は、その勧告として、PANをすべての経済主体・市民に広げること、そして税務情報ネットワーク(TIN)を建設・運営・移転方式で整備すること、を挙げている。
現在、PANの受付窓口を運営しているのは、UTIITSLと、NSDL(現在のProtean eGov Technologies)の二つである。
2020年5月28日、財務大臣はAadhaar(インドの生体認証付き個人識別番号)を使って即時にPANを発行する仕組みを正式に始めた。電子版のPAN(e-PAN)は無料で、同年2月からの試行期間中に約68万件が、およそ10分で発行されている。この時点で、発行済みのPANは5億520万件だった。
2024年11月、インド政府の経済問題閣僚委員会は「PAN 2.0」を承認した。PANを、指定された政府機関のデジタルシステムに共通の識別子として使えるようにする計画で、既存のPANの持ち主は新しいPANを申請する必要はない。政府の説明では、データベースにあるPANは7億8,000万件にのぼる。
2017年、IECがPANになった
インドで輸出入をするには、外国貿易総局(DGFT)が発行するIEC(Importer-Exporter Code、輸出入者コード)が要る。日本の輸出入者符号と同じく、申告の画面に入る事業者の番号である。
2017年6月12日、DGFTは通達(Trade Notice No. 09)を出した。物品・サービス税(GST)の導入に合わせて、IECの扱いを変えるものだった。
通達はまず現状をこう書いている。IECを取る手続はPANに基づいており、現時点でPANはIECと一対一で対応している。
そのうえで、こう決めた。
PAN of an entity will be used for the purpose of IEC, i.e., IEC will be issued by DGFT with the difference that it will be alpha numeric (instead of 10 digit numeric at present) and will be same as PAN of an entity.
事業者のPANがIECとして使われる。IECはDGFTが発行するが、それまでの10桁の数字ではなく英数字になり、PANと同じものになる。既存のIECの持ち主については、DGFTのシステムが移行を行う。
理由として通達が挙げたのは、省庁をまたいで事業者の識別を統一しておくこと。
新しく導入されるGSTの番号(GSTIN)をIECにしなかった理由も書いてある。GSTの登録は売上が一定額に満たなければ義務ではないので、GSTINはすべての輸出入者を覆う番号にはなりえない。IECは輸出入の事業に対する番号であり、DGFTが認識するのは事業者という単一の主体で、個々の取引ではない、と。
所得税の番号が、すべての事業者を覆うという理由で貿易の番号に選ばれた。インド関税当局も同じ月、輸入申告書にはIECに加えてGSTINも記載するよう案内し、いずれIECはPANやGSTINに置き換わる、と書いている。
DGFTの手続ハンドブックには今、「One PAN-One IEC」という一項がある。一つのPANに対して発行されるIECは一つだけ、という規定である。2023年版には、一つのPANに複数のIECが付いていたものは2015年3月31日の後に職権で無効にされた、という一文が添えられていた。
所得税法の側にも、これと呼応する規定がある。2015年時点の第139A条には、所得税以外の法律による税や関税を負う者にもPANの取得を求めうるという規定があり、そこには「税を納めるかどうかにかかわらず、輸入者と輸出者を含む」と書かれている。
展示会の貨物には、決まったコードがある
IECがPANになったあとも、PANを持たない者がインドに物を持ち込む場面はある。DGFTの手続ハンドブックは、そうした場面のために、決まった値のIECを列挙している。
中央政府の省庁、手荷物、個人使用の物品、ネパールやミャンマーとの国境地帯の取引——そして、展示会である。
ATAEF1096E — Importers importing goods for display or use in fairs/exhibitions or similar events under provisions of ATA carnet.
ATAカルネによって見本市・展示会などで展示または使用する物品を輸入する者のIECは、ATAEF1096E。このIEC番号は、ATAカルネ以外で展示会・見本市のために輸入する者も、ハンドブックの該当項に従って使うことができる、とある。2023年版でも、2026年7月版でも、番号は同じである。
この10文字を、PANの読み方で読んでみる。最初の5文字が英字、続く4文字が数字、最後の1文字が英字。4文字目の E は、PANの種別表にはない文字である。
ほかの固定コードも同じ形をしている。中央政府の省庁は AMDCG0111E、手荷物は IABBR0145E、個人使用は IIHIE0153E。
GSTINの中にもPANがいる
2017年に始まったGSTの登録番号、GSTINは15文字である。インド関税・間接税中央委員会(当時CBEC)の説明によれば、GSTの登録はPANに基づき、州ごとに行われる。
最初の2桁が州コード、次の10桁が法的主体のPAN、次の2桁が同じ州の中での事業体の番号、最後の1桁がチェックサム。
DGFTの通達の言い方では、GSTINは「PANの前に州コード、後ろに3桁の事業区分」を付けた番号である。同じ会社が複数の州で登録すれば複数のGSTINを持つが、真ん中の10文字はどれも同じPANである。
2018年の海上貨物マニフェスト規則(Sea Cargo Manifest and Transhipment Regulations, 2018)が定める到着マニフェストの項目には、「荷受人のコード(IEC/GSTINなど)」と並んで「通知先のPAN」という欄がある。荷受人の情報は、マスターB/LとハウスB/Lの両方がある場合はハウスB/Lに記載されたものによる、とされている。
2025年の新しい所得税法
1961年所得税法は、2026年4月1日に施行された2025年所得税法(Income-tax Act, 2025)に置き換えられた。インド政府の発表は「60年以上続いた1961年所得税法に代わる」と書いている。
PANの規定は、新法の第262条に移った。第139A条は、もう現行の条文ではない。
1976年に「査定官が識別のために割り当てることのできる番号」として法律に入った番号は、1995年に10文字とラミネートカードになり、2017年に輸出入者コードを吸収し、GSTの番号の中に入り込んだ。2024年には、政府機関のシステムに共通の識別子にする計画が承認されている。
ここに書いた制度の内容は、2026年10月時点でインド政府機関が公開している資料で確認したものである。インドの税制・貿易手続は改正が多く、2026年には所得税法そのものが新しくなった。実際の手続の前には、必ず最新の法令と各機関の案内をご自身でご確認いただきたい。
参照
- Income Tax Department, Section 139A(1975年税法改正法による挿入、1976年4月1日施行。施行前に割り当てられた番号のみなし規定、当時の定義)
- CBDT Notification S.O.274(E)(1976年4月1日)
- Finance Act, 1995, section 30(第139A条の差し替え、1995年7月1日。新シリーズの定義、旧番号の失効)/第139A条の1995年版におけるGIR番号の定義
- CBDT Notifications S.O.379(E)(1996年5月30日)、S.O.714(E)(1996年10月14日)、S.O.543(E)(1998年6月30日)
- Income Tax Department, "History of Direct Taxation"
- Income Tax Department, "How PAN is formed and how it gets its unique identity"(10文字の構成と種別コード)
- Income Tax Department, Section 139A(2015年版。第1A項、輸入者・輸出者を含む)
- ICAI, "Outsourcing of PAN related services by the Income Tax Department"(2003年7月1日からUTI Investor Services Ltdへ委託)
- Economic Survey 2002-03, Box 2.3(ケルカー・タスクフォースの勧告)
- Income Tax Department, PAN tutorial(UTIITSLとNSDL(現Protean)によるPANサービスセンター)
- PIB, 2020年5月28日(Aadhaarによる即時e-PAN)/2024年11月25日・26日(PAN 2.0の承認とFAQ)
- DGFT Trade Notice No. 09/2017-18(2017年6月12日。IECをPANと同一にする)
- CBIC, "Indian Customs gears up for GST roll-out"(2017年6月30日)
- DGFT, Handbook of Procedures 2023 第2章(2.07(b) 固定IEC、2.12 One PAN-One IEC)/Handbook of Procedures(2026年7月版)第2章
- CBEC, GST登録に関する案内(2017年6月。GSTINの構成)
- Sea Cargo Manifest and Transhipment Regulations, 2018(Notification No. 38/2018-Customs (N.T.)、2018年5月11日)
- PIB, 2026年4月1日(2025年所得税法の施行)/Income-tax Act, 2025 第262条