HSコードとは|6桁が世界共通になるまでの百年と、その先が国ごとに違う理由

番号を作り始めたのは税関ではなく統計学者だった。1853年の国際統計会議から、1931年のジュネーブ草案、1950年のブリュッセル条約、1988年のHS発効まで。日本が1966年に関税率表の別表を丸ごと入れ替えたとき何が起きたか、分類を変えるとなぜガットの譲許表まで直すことになるのか、そして「ミュータントは人間か」を裁判所が決めた日まで。

2021年12月23日公開 / 2026年9月 全面改稿・2本を統合

輸出入する品物には番号が付く。最初の6桁は世界中どこでも同じで、7桁目から先は国ごとに違う。日本は9桁、インドは8桁、米国は10桁である。

この「6桁まで」という線は、どこから来たのか。

番号を作り始めたのは税関ではない。統計を取る人たちだった。そして6桁で止まっているのにも、はっきりした出どころがある。

話は1853年から始まり、条約になるまでに130年かかっている。その間に日本の関税率表は二度、丸ごと入れ替わった。入れ替えるたびに、各国は条約の付表まで直すはめになっている。

目次

  1. 関税の表は、もともと「品物の名前を並べた紙」だった
  2. 1853年、先に困ったのは統計学者だった
  3. 1931年、ジュネーブで941の項ができて、戦争で止まった
  4. 1950年12月15日、ブリュッセルで同じ日に三つ
  5. 6桁と7桁目の境界は、1949年の草案で決まっていた
  6. 1966年4月、日本の関税率表が丸ごと入れ替わった
  7. 迷ったときは「税率の高い方」だった
  8. 分類を変えると、条約の付表を直すことになる
  9. ひとつの取引で、同じ品物が17回名前を変えていた
  10. 1987年のはずが、1988年になった
  11. 1988年1月、日本の税目は約3,000から約7,000へ
  12. 条約の義務は6桁まで。そして第77類は空いている
  13. ミュータントは人間か
  14. 5年ごとに書き直される表

関税の表は、もともと「品物の名前を並べた紙」だった

WCO(世界税関機構)が2018年に出したHS30周年の資料は、話をここから始めている。

Tariffs have probably been in existence for as long as governments. However early tariffs were simple lists of goods and the amount payable, usually by consignment, quantity or as a percentage of value.

関税は政府と同じくらい古いが、初期の関税表は品物と支払額を並べただけの単純なリストだった、と。荷口ごと、数量ごと、あるいは価格の何パーセント。それだけである。

このやり方は、取引される品物が少なく、名前を聞けば何のことか分かり、表の用途が税を取ることだけだった間はうまくいった。同じ資料は、それが崩れた理由もそっけなく書いている。過去150年で品物の種類と複雑さが、以前の税関が想像できた範囲をはるかに超えて増えた。同時に、貿易の中身を細かく知りたいという要求も増えた。

品名を並べる方式には、もうひとつ弱点がある。言語である。ある国の表の「絹織物」と、別の国の表の同じ言葉が、同じ範囲を指している保証はどこにもない。

1853年、先に困ったのは統計学者だった

この問題に最初に本気でぶつかったのは、税を取る側ではなかった。数える側である。

1853年から1876年にかけて、国際統計会議が9回開かれている。WCOの資料によれば、この一連の会議で練り上げられたのは、国際的な統計の分類を作ろうとするなら、その前提として国際的な関税表が必要だ、という考えだった。

順番に注意したい。統計を揃えたい人たちが、税関の表を揃えろと言い出したのである。同じ資料は「最初の国際関税品目表の試みは統計学者から生まれた」と書いている。

そして1889年、パリの国際商業会議で、こう問われた。

Would it not be in the interest of all nations to adopt in their Customs tariffs and in their official statistics comparable classifications and uniform vocabularies?

すべての国が、関税表と公式統計において、比較可能な分類と統一された語彙を採用することは、全員の利益になるのではないか。

商業の側からも同じ要求が出たということである。ただし同じ資料は、統一された語彙を作ることの極端な難しさは当時から認識されていた、とも付け加えている。

1931年、ジュネーブで941の項ができて、戦争で止まった

最初に形になったのは、国際連盟の下でである。

1931年、国際連盟の「関税品目表統一のための専門家小委員会」が「関税品目表草案」を完成させた。通称ジュネーブ品目表。加盟国政府の意見を求めるために公開された。

中身の規模は分かっている。4桁の項が941、86の類に整理され、それが21の部にまとめられていた。

寄せられた意見を織り込んだ改訂版が1937年に出る。そして第二次世界大戦が始まり、この品目表を各国に広める作業は中断した。

21の部という骨格は、このとき決まっている。今のHS品目表も部の数は21である。

1950年12月15日、ブリュッセルで同じ日に三つ

戦後、話は一気に動く。復興と貿易自由化の圧力で、共通の品目表がまた必要になった。

1948年から、ヨーロッパ関税同盟研究グループが、参加国共通の関税表を作る作業を始める。土台にしたのはジュネーブ品目表だった。当時ほかに標準と呼べるものが存在しなかったからである。ただしジュネーブの原文には相当な修正が加えられた。技術の進歩を反映させる必要と、ジュネーブ型の関税表を先に採用した国々が見つけた不具合を直す必要があった。

1949年、項と号を含む予備草案ができる。ここで研究グループは判断を変えた。ヨーロッパ関税同盟の計画がどうなるかにかかわらず、品目表という成果だけは先に使えるようにすべきだ、と。

こうして1950年12月15日、「関税率表における商品分類のための品目表に関するブリュッセル条約」が成立する。同じ日に、関税協力理事会を設立する条約と、関税評価に関する条約も署名開放されている。表と、表を管理する組織と、価格の決め方が、同じ日に一組で出された。

発効はすぐではなかった。1955年7月1日に改正議定書が採択され、品目表の改訂版が確定したあと、1959年9月11日に発効している。署名から9年近くかかっている。

この品目表は当初「ブラッセル(関税)品目表」(BTN)と呼ばれた。1974年に「関税協力理事会品目表」(CCCN)へ改称されている。理由は、どの国際機関が責任を持つものなのかについての混乱を避けるため、とされている。

6桁と7桁目の境界は、1949年の草案で決まっていた

ここが、今の「6桁までは世界共通」の出どころである。

1949年の予備草案には、項と号の両方が入っていた。しかし条約で固定することにしたのは項だけだった。WCOの資料の書き方はこうである。

It was accordingly decided that the headings of the preliminary draft Nomenclature (other than the subheadings, which were left to the initiative of individual countries), should be established by a Convention.

号は各国の自主性に委ねられ、条約で決めるのは項だけとされた。国際的に固定する層と、各国が自由にする層。この二階建ては、HSが生まれる34年前に、すでにこの形で採用されている。

BTNの4桁の作り方も、今と同じだった。前の2桁がその項の属する類を表し、後ろの2桁が類の中での位置を表す。

1966年4月、日本の関税率表が丸ごと入れ替わった

日本がこの表に乗り換えた日付は、国会の記録で確かめられる。

1967年7月4日の衆議院本会議で、外務委員長の福田篤泰がガットの確認書について報告している。

わが国の関税定率法の別表は、昨年四月、ブラッセル関税品目分類表に合致した新しい関税率表に全面的に改正されました。

昨年四月、つまり1966年4月である。根拠法は関税定率法の一部を改正する法律(昭和41年法律第37号、1966年3月31日)。この法律の条文には、別表そのものと並んで、見慣れた見出しが入っている。「関税率表の解釈に関する通則」である。

品物がどの区分に入るかを決めるための原則を、法律の条文として持つ。この形は、このとき日本の法律に入った。

迷ったときは「税率の高い方」だった

1966年の通則と、今の通則を並べると、変わった箇所がはっきり出る。

二つ以上の区分に当てはまって見えるときの決め方が、両方に置かれている。まず特殊な記載が一般的な記載に優先する。それでも決まらなければ、重要な特性を与えている材料や構成要素で決める。ここまでは同じである。

問題はその次、どちらでも決まらなかった場合の最後の一手だ。1966年の条文はこうだった。

(a)及び(b)の規定により所属を決定することができない物品は、これにつき最も高い税率が定められている号に属するものとする。

最も高い税率が定められている方に入れる。 決着がつかないときは、税が高い側に倒す、と法律に書いてあった。

現行の通則3(c)は、こうなっている。

(a)及び(b)の規定により所属を決定することができない物品は、等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に属する。

数字の並びで後にくる方に入れる。 税率とは無関係な、表の上の順序だけで決まる。

同じ場面を扱う条文が、「徴税上有利な側」から「表の上の機械的な順序」に置き換わっている。ほかにも差はある。1966年の通則は1から5までの5つで、号のレベルの比較を定める現在の通則6は存在しない。未完成品や組み立ててない物品を完成品に含めるという現在の通則2(a)も、1966年の条文には見当たらない。

分類を変えると、条約の付表を直すことになる

1966年4月に別表を入れ替えた日本は、そのあと厄介な作業に入る。福田の報告の続きがそれである。

これに伴いまして、この改正前に締結したガット文書に収録されておるわが国の関税譲許表を新しい品目分類法に基づいたものに訂正することが、関税事務の運用上必要となりましたので、政府は関係各国の了解を求める交渉を進めておりましたが、本年五月五日、この訂正を実施するために必要なるガット上の手続を終了いたしました。

ガットの譲許表——この品目にはこれ以上の関税をかけないと約束した表——は、旧分類の品目名で書かれている。表の区分けが変われば、約束の範囲がずれる。だから相手国の了解を取り、手続を踏んで、譲許表を新分類で書き直すことになる。1966年4月の改正に対して、手続が終わったのは1967年5月5日である。

しかもこれは一度では済んでいない。BTNは1965年1月1日、1972年1月1日、1978年1月1日、1988年1月1日に更新されている。1975年3月28日の衆議院本会議で、栗原祐幸が報告しているのは、そのうち1972年分の後始末である。

わが国の関税定率法の別表は、昭和四十七年にブラッセル関税品目分類表に合致するよう改正され、これに伴いまして、この改正前に締結したガット文書に収録されているわが国の関税譲許表を新しい品目分類法に基づいたものに訂正することが、関税事務の運用上必要となりましたので、政府はガット締約国の了解を求めるためその協議を進めてまいりました。

こちらは1973年3月に手続を終え、1975年に国会で承認されている。改正から承認まで3年かかっている。

品目表は単独で存在していない。関税の譲許、貿易協定の対象品目リスト、輸出入の規制対象リスト——番号で書かれたものすべてが、表にぶら下がっている。表を差し替えると、ぶら下がっている全部を書き直すことになる。この費用が、後の話に効いてくる。

ひとつの取引で、同じ品物が17回名前を変えていた

1960年代の終わり、別の方向から不満が出る。貿易書類である。

国名、数量単位、輸送手段、荷扱いの条件、そして品名。同じ情報が書類ごとに違う書き方をされていた。WCOの資料が挙げている数字がひとつある。

it had been found that a commodity could be designated up to 17 times in the course of a single international transaction.

ひとつの国際取引の過程で、同じ品物が最大17回、別々に指定されていた。

電子的にデータを送る技術は、このころすでに解決策になりえた。ただし、国際的に認められたコードで品物を識別できる場合に限る、という条件が付く。

1970年初め、関税協力理事会が他の国際機関と協議し、欧州経済委員会の会合で、この問題の研究は理事会が引き受けるのが最適だという合意ができた。理事会は研究グループを設置する。税関、統計、輸送業者、生産者の要求をまとめて満たせる品目表が作れるかを検討するためである。検討対象にはCCCNのほか、国連のSITC(標準国際貿易分類)も入った。

1973年5月、理事会が承認した最終報告の結論はこうだった。そうした品目表の開発は可能であるだけでなく、貿易円滑化の長期的な利益にとって不可欠である。CCCNを核とし、SITCと突き合わせて作る。

実際に作業が始まると、参加者は膨らんだ。60近い国と、20を超える国際機関・国内機関が、HS委員会とその作業部会に関わっている。国連統計部、UNCTAD、ガット、ISO、国際商業会議所、国際海運会議所、IATA、国際鉄道連合。税関の表を作る委員会に、航空会社と鉄道と船社の団体が座った。

参照された既存の表の一覧も残っている。CCCNに基づくもの(日本の関税率表、ラテンアメリカ自由貿易連合の品目表、EC域内貿易統計の品目表)、独自に発展したもの(カナダと米国の関税率表、カナダの輸出入商品分類、米国のスケジュールB)、そして輸送用の品目表(国際鉄道連合の標準商品品目表、IATAの世界航空貨物商品分類、西インド大西洋航路同盟の運賃表、標準輸送商品コード)。

1981年初めに全体の準備作業が完了する。WCOの資料は、このとき初めてこの体系の本当の姿が見えてきた、と書いている。CCCNとSITC第2次改訂版の派生物と見なされがちだったが、実際には輸送可能な物品のための新世代の多目的6桁品目表だった、と。

1983年6月、ブリュッセルで開かれた第61/62回会合で、関税協力理事会が条約案を承認し、署名に開放した。1853年の統計会議から130年後である。

1987年のはずが、1988年になった

条約には当初、1987年1月1日に実施すると書かれていた。第13条がそう起草されていた。

それが1年ずれる。WCOの資料が挙げている理由は二つで、そのうち一方は前に見たあの作業である。

However, delays in administrative measures and in GATT Article XXVIII negotiations, necessitated by the transposition of national tariffs to the format of the Harmonized System, forced the Council to abandon the January 1987 date

各国の関税率表をHSの形式に移し替えるために必要になった、行政手続とガット第28条交渉の遅れ。日本が1966年と1972年の二度やった譲許表の書き直しを、今度は世界中が同時にやることになったわけである。

日本の国会には、そのずれの記録が別の形で残っている。1986年6月24日にブラッセルで作成された改正議定書——条約の発効要件を変えるためのもの——が、条約本体と一緒に1987年5月に承認されている。同じ1987年5月26日の参議院外務委員会には、ガットのジュネーブ議定書(1987年)と民間航空機貿易協定の附属書改正議定書も一括でかかっていた。外務委員長の宮澤弘の報告はこうである。

いずれも商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約に定められた品目表に適合した表にかえることを内容とするものであります。

付表を差し替えるためだけの議定書が、二本。表を変えるとは、こういうことである。

HS条約は1988年1月1日に発効した。

なお、米国が加入書に署名したのは1988年10月26日、レーガン大統領によるものである。発効から10か月後で、米国のHTSUSが動き出したのは1988年包括通商競争力法に基づき1989年1月1日だった。世界最大の輸入国が、1年遅れて合流している。

1988年1月、日本の税目は約3,000から約7,000へ

移行の規模も、国会の記録に残っている。1988年3月30日の参議院大蔵委員会で、和田教美が質問に入る前提としてこう述べている。

ことしの一月から関税率表の商品分類がCCCN(関税協力理事会品目表)からHS(商品の名称及び分類についての統一システム)に移行しておりますけれども、実行品税目数が約三千から約七千にふえることもあって、去年のHS法案の審議の際にもスムーズな移行が可能かどうか心配されたところでございます

税目が約3,000から約7,000へ、2倍以上になった。 前年の審議で、移行が無事に済むのかが心配されていたという。

答えたのは大蔵省関税局長の大山綱明である。

結論を先に申し上げますと、今までのところスムーズに移行が行われているということでございます。もともと今回のHS分類体系はCCCNの分類大系をベースとしたものでございましたので、割合に関税職員にとってはなれ親しみやすいものであったということ、それからまた、早目に法案を通過さしていただきましたことで、準備期間というのが半年以上のかなり長い期間ございまして、その間に通関業者等の教育訓練と申しましょうか、それも行き届いたというようなことから、現在のところ特に大きな問題は生じておりませんで、全体として順調に実施されております。

HSがCCCNを土台に作られたこと、そして半年以上の準備期間があったこと。1973年の報告書が「CCCNを核とする」と決めていた判断が、15年後の現場でこう効いている。

条約の義務は6桁まで。そして第77類は空いている

現在の形を、税関の資料で押さえておく。

HS品目表は21の部と96の類からなる。日本の実行関税率表では項が1,227、その下の号が5,611ある(税関の説明資料、2024年4月時点)。HS条約の加盟は160か国・地域とされている。

4桁が項、6桁が号、上2桁が類。6桁まではHS品目表に基づく番号で、下3桁は統計品目表において定める日本独自の番号である。だから日本の申告に使う統計品目番号は9桁になる。

条約が各国に義務付けているのは、この6桁までの部分だけだ。第3条1項(a)は、HSのすべての項と号を追加も修正もせずに用いること、通則と部・類・号の注をすべて適用すること、HSの数字の並びに従うことを求めている。第3条1項(b)は、6桁のコードに従った輸出入統計を公表することを求める。そして第3条3項が、6桁より先の細分を認めている。

subdivisions classifying goods beyond the level of the Harmonized System, provided that any such subdivision is added and coded at a level beyond that of the six-digit numerical code

だから7桁目から先は国ごとにばらばらになる。日本は9桁。インドのITC(HS)は8桁で、最後の2桁がインド独自の細分である。米国のHTSUSは10桁。EUは品目分類のためのCNが8桁で、規制まで含めたTARICが10桁。1949年に「号は各国の自主性に委ねる」と決めた線が、そのまま今の桁数の違いになっている。

類の番号には、もうひとつ癖がある。第77類が存在しない。日本の関税率表の備考にはこうある。第77類は、HS条約において将来使用するために留保されている。

中身が空のまま、番号だけが確保されている類がある。

ミュータントは人間か

表の区分が、そのまま金額になる場面がある。

米国の関税率表には長いあいだ、「人間のみを表す人形」の項と、「その他の玩具」の項が別々に存在した。税率が違う。人形は12%、動物その他の人間でない生き物を表す玩具は6.8%だった。

トイ・ビズ社が輸入していたのは、マーベルのアクションフィギュアである。X-MEN、スパイダーマン、ファンタスティック・フォー。税関は人形として12%で分類した。会社側は、これらは人間ではない生き物を表しているので玩具だと主張した。

2003年1月3日、米国国際貿易裁判所のジュディス・バージレイ判事が判断を下す。玩具のフィギュアが「人形」に分類されるためには、それが明確に人間を表していなければならない。マーベルのフィギュアは人間でない特徴を備えているから、その他の玩具に当たる。税率は12%から6.8%に半減した。

自分たちのキャラクターは人間ではないと会社が法廷で主張し、裁判所がそれを認めた。X-MENという作品が、人間として扱われることを求めるミュータントの物語であることを思えば、収まりの悪い結論ではある。マーベルはのちに、彼らは並外れた能力を持つ人間だと述べている。

この争いは、もう起こらない。2007年版のHS品目表で、人形と玩具を分ける項の立て方そのものが無くなったからである。

WTO事務局がまとめたHS2007への移行表に、その一行がある。

New heading 95.03 has been created to cover toys of all kinds.

あらゆる種類の玩具を対象とするために、新しい95.03項が創設された。移行表が示す対応関係は、9501.00、9502.10、9502.91、9502.99、そして旧9503の10個の号——合わせて14の6桁コードが、9503.00の一つに畳まれている。

今の日本の実行関税率表の第95類を開くと、最初の項は95.03で、95.01も95.02も無い。

95.03 三輪車、スクーター、足踏み式自動車その他これらに類する車輪付き玩具、人形用乳母車、人形、その他の玩具、縮尺模型その他これに類する娯楽用模型(作動するかしないかを問わない。)及びパズル

車輪付き玩具も、人形も、その他の玩具も、模型も、パズルも、ひとつの項にまとめて入っている。その下の号も9503.00の一本しかない。

2003年に米国の法廷で5.2ポイントを分けた線は、いま表の上に引かれていない。

5年ごとに書き直される表

HS品目表は約5年ごとに改正されてきた。1992年、1996年、2002年、2007年、2012年、2017年、2022年。WCOの資料が版ごとの規模を並べている。1992年版は主に編集上の改正。1996年版が393組、2002年版が374組、2007年版が354組、2012年版が225組、2017年版が233組である。

号の総数の動きも同じ表にある。1988年の5,019から、1996年に5,113、2002年に5,224。そして2007年版で5,052へ減っている。増え続けてきた表が、このときだけ縮んだ。人形の項が玩具の項に吸収されたのは、その版である。以降は2012年に5,205、2017年に5,387と、また増えていく。

改正の手続きは条約第16条にある。勧告された改正は、通知から6か月後に、異議が残っていなければ受諾されたものとみなされ、通知の時期に応じて決まった1月1日に実施される。

次は2028年版である。WCOによれば299組の改正が入り、結果として品目表は1,229の項と5,852の号になる。6つの項が新設され、5つの項が削除される。号は428が新設され、172が削除される。 実施は2028年1月1日。

新しく番号が与えられるものの一覧は、その時代の記録になる。2028年版では、救急車、防護具、人工呼吸器、診断機器といった保健上の緊急時に要る物資。ワクチンは二つの新しい項に分かれる——人用が30.07、それ以外が30.08。栄養補助食品は21.07という新しい項を持つ。プラスチックの廃棄物は39.15項の中で区分が組み直され、ストロー、包装、食器、手袋、綿棒、風船、漁網といった使い捨てプラスチック製品に個別の番号が与えられる。

1931年のジュネーブ品目表は941の項だった。2028年版は1,229の項になる。百年で増えたのは300弱である。その300の中に、世界が何を別々に数える必要があると考えてきたかが入っている。

品目表は、税を取るための道具として作られたのではなかった。数えるために作られ、数えたい人たちが税関に「表を揃えてくれ」と頼むところから始まった。だから今でも、この表の改正で議論されるのは税率ではなく、何を別の番号にするか——つまり、何を別のものとして数えるか、である。


参照

  • World Customs Organization, The Harmonized System: A universal language for international trade 1988-2018(30周年コンペンディウム。1853〜1876年の国際統計会議、1889年パリ国際商業会議、1931年ジュネーブ品目表の941項・86類・21部、1950年12月15日のブリュッセル三条約、1955年7月1日の改正議定書と1959年9月11日の発効、1974年のCCCNへの改称、1973年5月の研究グループ最終報告、1983年6月の第61/62回理事会、1987年から1988年への延期、各版の改正組数)
  • 関税定率法の一部を改正する法律(昭和41年法律第37号、1966年3月31日)別表および「関税率表の解釈に関する通則」
  • 第55回国会 衆議院本会議 1967年7月4日 外務委員長 福田篤泰 報告(別表の全面改正は「昨年四月」、ガット上の手続完了は1967年5月5日)
  • 第75回国会 衆議院本会議 1975年3月28日 外務委員長 栗原祐幸 報告(昭和47年の改正と、1973年3月の手続完了)
  • 第108回国会 参議院外務委員会・本会議 1987年5月26日・27日 外務委員長 宮澤弘 報告(HS条約および1986年6月24日ブラッセル作成の改正議定書、ガット・ジュネーヴ議定書と民間航空機貿易協定附属書の改正議定書)
  • 第112回国会 参議院大蔵委員会 1988年3月30日 和田教美 質疑・大蔵省関税局長 大山綱明 答弁(税目数が約3,000から約7,000へ、移行の状況)
  • 税関「Classification and the HS」(部21・類96、項1,227・号5,611、6桁までがHS・下3桁が日本独自、HS条約は2024年4月時点で160か国・地域)
  • 税関「関税率表の解釈に関する通則」(現行の通則1〜6および備考。第77類の留保)
  • 税関 実行関税率表 第95類(95.03の規定。95.01・95.02は存在しない)
  • International Convention on the Harmonized Commodity Description and Coding System 第3条、第13条、第16条
  • Toy Biz, Inc. v. United States, 248 F. Supp. 2d 1234(米国国際貿易裁判所、2003年1月3日、ジュディス・バージレイ判事。人形12%/その他の玩具6.8%)
  • World Trade Organization, Transposition of schedules of concessions into HS2007 — Note by the Secretariat on methodology(第95類の対応表。9501.00・9502.10・9502.91・9502.99および旧9503の各号が9503.00へ統合。「New heading 95.03 has been created to cover toys of all kinds.」)
  • World Customs Organization, HS品目表の各版の改正組数と号の総数(1988年5,019/1996年5,113・393組/2002年5,224・374組/2007年5,052・354組/2012年5,205・225組/2017年5,387・233組。30周年コンペンディウム所収)
  • World Customs Organization, HS 2028 Amendments Effective from 1 January 2028(299組の改正、1,229項・5,852号、新設6項・428号、削除5項・172号)
  • United States International Trade Commission, About the Harmonized Tariff Schedule(1988年包括通商競争力法によるHTSUS、1989年1月1日施行)
  • Directorate General of Foreign Trade(India)ITC(HS) の8桁分類
  • European Commission, Combined Nomenclature / TARIC(CN 8桁、TARIC 10桁)

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佐々木 慎 / 株式会社パシフィック

2004年から国際展示会の物流に携わっています。

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