FIATAモデル規則とは|フォワーダーは運送人か代理人か。各国ばらばらの約款を一つの型にするまで
1926年5月31日、ウィーンで16の団体が集まってFIATAができた。フォワーダーは長く「運送人ではなく代理人」とされ、銀行はその船荷証券を受け取らなかった。FBLが1983年に信用状の規則に名前を載せ、1996年のカラカスで責任のモデル規則が採択されるまで。
2025年6月5日公開 / 2026年10月 全面改稿
FIATAは、各国のフォワーダー団体が加盟する国際的な連合会である。正式名称はフランス語で Fédération Internationale des Associations de Transitaires et Assimilés、英語では International Federation of Freight Forwarders Associations という。略称はフランス語の頭文字から来ている。
そのFIATAが1996年に採択したのが、FIATA Model Rules for Freight Forwarding Services(フォワーディング業務のためのFIATAモデル規則)である。フォワーダーが何について、どこまで責任を負うのかを定めた約款の雛形で、2019年に改訂されている。
なぜ雛形が必要だったのか。それを辿ると、フォワーダーという職業が百年以上抱えてきた問いに行き着く。フォワーダーは運送人なのか、それとも代理人なのか。
目次
- 1926年5月31日、ウィーン
- 運ぶのか、手配するだけなのか
- 銀行はフォワーダーの船荷証券を受け取らなかった
- 条約にしようとした試みは、フォワーダー自身が止めた
- 国ごとの約款
- 1994年の作業部会、1996年のカラカス
- モデル規則に書いてあること
- 2019年の改訂と、日本の加盟
1926年5月31日、ウィーン
FIATAの設立は1926年5月31日、場所はウィーンである。FIATAの沿革によれば、欧州各地のフォワーダーを代表する16の団体が集まった。
顔ぶれを見ると、当時のヨーロッパの地図がそのまま出てくる。ウィーンのフォワーダー中央連合、アントワープ、プラハ、コペンハーゲン、ベルリン、ブダペスト、トリエステ、アムステルダム、ベルン、ロンドン。セルビア・クロアチア・スロベニア王国のザグレブとマリボル、そして当時はポーランド領で現在はウクライナのリヴィウ(レンベルク)の団体も名を連ねている。
16団体のうち2つは、ウィーンとコペンハーゲンの家財輸送(引越し業者)の団体だった。プラハにも、フォワーダーと引越し業者をあわせた団体があった。フォワーディングと家財輸送が、同じ業界として扱われていた時代である。
設立の目的は、異なる地域のフォワーダー団体をひとつにまとめ、共通の職業上・経済上の利益を守り、伸ばすこととされた。
その後、事務局はスイスに置かれた。2019年時点の住所はチューリッヒ空港に近いグラットブルクで、FIATAの書式には今も「© FIATA / Zurich – Switzerland」と刷られている。2019年10月5日の総会でジュネーブへの移転が決まり、2020年から本部はジュネーブにある。
2023年10月のFIATAの発表では、団体会員114、個人会員6,000超、およそ150か国、代表するフォワーディング・物流企業は4万社とされている。国連経済社会理事会(ECOSOC)の協議資格は1970年から持っている。
運ぶのか、手配するだけなのか
フォワーダーとは何者か。この問いには、法律家たちが長く手を焼いてきた。
1920年の英国の判決(Jones v European General Express)で、ロウラット判事はこう述べた。フォワーダーは、品物を世界の果てまで送ってくれる。しかし、運ぶことを引き受けているわけではない——。
フランス法には、この区別を表す言葉が二つある。運送に付随する役務だけを提供する者は transitaire(トランジテール)。運送を端から端まで引き受ける者は commissionnaire de transport(コミッショネール・ド・トランスポール)。FIATAの名称にある Transitaires は前者の言葉である。
FIATAのモデル規則の作業部会で議長を務めたスウェーデンの法学者ヤン・ランベリ(Jan Ramberg)は、1998年の論文でこの問題を扱っている。論文によれば、この職業はもともと「freight forwarding agent」と呼ばれていた。単に「freight forwarder」と呼ばれるようになったのは後のことである。
ランベリは、フォワーダーを1941年の英国映画の主人公になぞらえて「法律上のピンパーネル・スミス」とみなしたくなる、と書いている。フォワーダーは荷物を引き受け、運送を手配する。ところが事故が起きると、ときに自分は運送人ではない、責任は実際に運んだ船会社やトラック会社に問うてくれ、という立場をとる。その捕まえどころのなさを、神出鬼没の主人公に重ねている。
運送人なのか代理人なのかで、荷物がなくなったときの責任がまるで変わる。運送人なら自分が責任を負う。代理人なら、一般に、選んだ運送人に落ち度があっても、選び方や指示に過失がなければ責任を負わないとされる。
銀行はフォワーダーの船荷証券を受け取らなかった
この「代理人」という立場は、書類の世界で実害を生んだ。
信用状取引の国際ルールである国際商業会議所(ICC)の信用状統一規則(UCP)は、1983年の改訂まで、フォワーディング・エージェントが発行した船荷証券は拒絶せよと銀行に指示する規定を持っていた。ランベリは、その理由は「エージェント」という言葉を見れば分かる、と書いている。代理人の発行した書類は、運送を引き受けた証拠にならないからである。
しかし、船・鉄道・トラックをまたいで一貫して運ぶ複合輸送には、それを一枚で引き受け、しかも信用状で銀行に受け取ってもらえる書類が必要だった。
FIATAはそれを自分たちで作った。FBL(FIATA Combined Transport Bill of Lading、現在の名称は FIATA Multimodal Transport Bill of Lading)である。FIATAのガイダンスによれば、FBLが生まれたのは1968年で、信用状で受け取ってもらえる複合輸送書類が求められていたからだという。ランベリは最初の版の発行を1971年としている。
FBLの発行者は、代理人としてではなく、運送人として責任を負う。FIATAはそのことを書類の約款に明記した。
そして1983年のUCP改訂で、第25条がFBLを名指しで取り上げた。フォワーダーの書類を拒絶せよと言っていた規則が、フォワーダー団体の書類の名前を載せたのである。
現在使われているFBLの約款は1992年版で、前年の1991年に国連貿易開発会議(UNCTAD)とICCが定めた「複合運送書類に関する規則」(ICC Publication 481)に準拠している。ランベリによれば、この1991年規則を最初に採り入れたのがFIATAの1992年版FBLで、少し遅れてBIMCOの「MULTIDOC 95」が続いた。
FBLの責任限度額は、1包または1単位あたり666.67SDRか、1キログラムあたり2SDRの高い方。海上・内水の区間を含まない輸送では、1キログラムあたり8.33SDRになる。SDRはIMFの特別引出権で、国際運送の責任額でよく使われる単位である。
FIATAの書式はFBLだけではない。FIATAが最初に作った標準書式はFCR(Forwarders Certificate of Receipt、フォワーダー貨物受領証)である。ICCは1975年にFCRを認めている。書式には色が決まっていて、FCRは緑、FBLとFWB(複合運送運送状)は青、FCT(Forwarders Certificate of Transport)は黄、FWR(FIATA Warehouse Receipt)はオレンジ。2022年には、ブロックチェーン上で発行するデジタルFBLが始まっている。
条約にしようとした試みは、フォワーダー自身が止めた
書類の問題はFBLで片付いた。残ったのは、フォワーダーの責任そのものの問題である。FBLを使わない仕事、つまり大半の日常業務では、責任は各国の法律と、各国の業界団体が作った約款で決まっていた。
これを国際条約で統一しようとした試みがある。私法統一国際協会(UNIDROIT)が1967年にまとめた、フォワーディング契約に関する条約草案である。
この草案は外交会議にかけられることなく終わった。ランベリによれば、主な理由はFIATAの反対だった。
フォワーダーの世界団体が、フォワーダーの責任を統一する条約を止めた。ここだけ切り取ると奇妙に見えるが、各国のフォワーダーはすでに自国の約款で仕事をしていた。
国ごとの約款
各国の約款は、それぞれ独自の歴史を持っている。
北欧には北欧フォワーダー協会の約款(NSAB)があり、ランベリによれば1919年から1994年まで改訂を重ねてきた。北欧では、荷主側の団体と交渉して約款を作る「合意された」約款の伝統がある。業界が一方的に決めるのではなく、客の側と擦り合わせた条件である。
ドイツにはドイツの、英国には英国の約款がある。代理人として扱うのか運送人として扱うのか、責任の根拠と免責、損害の通知期限、時効、限度額。どれも国ごとに違った。
同じ一つの貨物が、出発地のフォワーダーと到着地のフォワーダーの手を順に渡っていく。その二者が、まったく違う約款で仕事をしている。これが国際フォワーディングの実際だった。
1994年の作業部会、1996年のカラカス
条約は止めた。しかし、各国の約款がばらばらのまま増え続けるのも困る。まだ約款を持たない国もあった。
ランベリは書いている。責任制度の乱立を避ける必要を認識して、FIATAは1994年に作業部会を設け、モデル規則の作成を委ねた。まだ標準約款を持たない国だけでなく、国際的に統一された枠組みに合わせたい国でも使えるようにするためだった、という。
議長だったランベリは、合意に至るまでに「かなりの困難に直面した」と書いている。代理人としてのフォワーダーと本人(運送人)としてのフォワーダーの区別、責任の根拠と免責、通知、時効、限度額。各国の約款が違っていた項目が、そのまま交渉の論点になった。
1996年、ベネズエラのカラカスで開かれたFIATA世界大会で、FIATA Model Rules for Freight Forwarding Services が採択された。
条約ではなく、モデル規則という形をとった。条約は国が批准すれば強制力を持つ。モデル規則は、使う者が契約に取り込んだときにだけ効力を持つ。1967年に条約を止めたFIATAが、29年後に自ら選んだのは、強制ではない統一だった。
モデル規則に書いてあること
モデル規則の第1条は、その性格をはっきり書いている。
These Rules apply when they are incorporated, however this is made, in writing, orally or otherwise, into a contract by referring to the FIATA Model Rules for Freight Forwarding Services.
この規則は、書面でも口頭でもその他の方法でも、契約に取り込まれたときに適用される。取り込まれなければ適用されない。FIATA自身も、モデル規則は任意のものなので、世界中で一様に適用されているわけではなく、その点でFBLの約款とは違う、と説明している。各国の標準約款がモデル規則を下敷きにしていることが多い、とも。
フォワーディング業務の定義は広い(第2条)。運送、混載、保管、荷役、梱包、配送、そしてそれに付随する役務と助言。通関や税務、公的な申告、保険の手配、代金や書類の取立ても含む、と列挙されている。
責任の限度は、貨物の滅失・損傷について、総重量1キログラムあたり2SDR(第8条)。遅延については、遅延の原因となった業務の報酬額まで。そのほかの損害については「1件あたり……SDR」と、金額が空欄になっている。脚注には、上限額は意図的に空けてあり、規則を使う国の状況に合わせて埋めるもの、とある。
時効は、貨物の引渡しから9か月(第10条)。外から分からない損傷は、引渡しから6日以内に書面で通知がなければ、良好な状態で引き渡されたものと推定される。それ以外の請求は、顧客がその事実を知った、または知り得た日から14日以内に書面で行う(第9条)。
保険についての条文は一つだけある(第3条)。フォワーダーは、顧客から書面で明示の指示がない限り保険を付けない。付けた保険は保険証券の通常の条件と免責に従う。
2019年の改訂と、日本の加盟
2019年、南アフリカのケープタウンで開かれたFIATA世界大会で、モデル規則は改訂された。主な変更は「書面」の定義で、電子的な手段を広く含むようになった。1996年版の書面の定義は、電報、テレックス、ファクス、電子的な記録を挙げていた。
FIATAはこの改訂に際して、1996年のモデル規則が業界の重要な基準になり、いくつかの国では業界を規律する国内法にまで影響を与えた、と振り返っている。
日本では、国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)が1981年に設立総会を開き、1985年に社団法人として発足した。1986年に独自の複合運送船荷証券(JIFFA MT B/L)を定めている。標準取引条件は2010年に制定され、2020年に新たな版(STC 2020)が制定された。JIFFAがFIATAの団体正会員として正式に加盟したのは、2013年10月である。2024年12月には、電子船荷証券についてFIATAと覚書を結んだ。
FIATAの名簿に載る日本の団体会員は、2026年10月時点で三つ。航空貨物運送協会(JAFA)、日本海運貨物取扱業会(JFFF)、そしてJIFFAである。
1926年にウィーンで16団体が集まったとき、加盟団体はすべてヨーロッパにあった。FIATAは2026年5月31日に設立100周年を迎えた。会員の広がりは、2023年の発表の時点でおよそ150か国に及んでいる。
ここに書いた規則の内容は、2026年10月時点でFIATAが公開している文書で確認したものである。モデル規則は契約に取り込まれたときにだけ適用され、各国の団体はそれぞれ独自の標準約款を持っている。個々の取引に何が適用されるかは、その契約の条件による。
参照
- FIATA, "FIATA History"(1926年5月31日設立、16団体の一覧と設立目的)
- FIATA, "About"(ウィーンで設立、名称の由来、本部はジュネーブ)
- FIATA, "FIATA appoints new Director General"(2019年11月25日、チューリッヒ発。2019年10月5日の総会でジュネーブ移転を決定)
- FIATA, "FIATA grows in size, serving an ever-increasing number..."(2023年10月13日。団体会員114、個人会員6,000超、4万社、約150か国)
- FIATA, "FIATA celebrates 100 years"(2026年5月31日)/FIATA Directory
- 国連 iCSO データベース(International Federation of Freight Forwarders Associations, Roster 1970)
- Jan Ramberg, "Unification of the Law of International Freight Forwarding", Uniform Law Review 1998-1, UNIDROIT(Jones v European General Express (1920)、transitaire と commissionnaire de transport、1983年以前のUCP、1971年のFBL、UNIDROIT 1967年草案とFIATAの反対、NSAB、1994年の作業部会、1996年カラカスでの採択)
- 国際商業会議所(ICC), Uniform Customs and Practice for Documentary Credits, 1983 Revision(ICC Publication No. 400)第25条
- FIATA, Guidance note on the Terms and Conditions applicable to the FIATA Multimodal Transport Bill of Lading(FBLの起源を1968年とする。モデル規則は任意で一様には適用されない)
- FIATA, Documents and Forms(FBL 1992年版約款と責任限度額、FCR、ICCによる1975年の承認、書式の色、2022年のデジタルFBL)
- FIATA Model Rules for Freight Forwarding Services(2019年版。第1条、第2条、第3条、第8条、第9条、第10条)および1996年版
- FIATA, "Model Rules on Freight Forwarding Services update"(2019年ケープタウン世界大会での改訂)
- 一般社団法人国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)「沿革」(1981年設立、1986年JIFFA MT B/L、2013年10月FIATA正会員加盟、2024年12月FIATAと電子船荷証券に関する覚書)