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2026年、展示会物流に「新しい壁」が立ちはだかる

更新日:3 日前

関税だけでは語れない、海外展示会出展の「見えないコスト」





2025年から2026年にかけて世界の通商環境は再び変動期に入りました。関税政策の見直し、二国間交渉の活発化――これらは大企業だけでなく、海外展示会に出展するすべての日本企業に影響を及ぼします。


しかし、本当の課題は関税率の上下だけではありません。むしろ、展示会物流の現場で直面するのは、「見えない規制の迷路」です。




展示品輸送は「一時輸入」――そこに潜む複雑さ


海外展示会への出展では、製品を「売る」のではなく「見せる」ために持ち込みます。そのため、通常の輸出入とは異なる手続きが必要です。


ATAカルネ、TIB(一時輸入許可)、そして各国独自の通関要件――これらは「一時的だから簡単」というものではありません。むしろ、通常の商業輸送以上に細かな書類対応が求められるケースも少なくありません。


さらに2026年以降、環境規制や製品安全基準の厳格化により、展示品であっても事前の認証や書類提出を求められる国が増えています。「展示するだけなのに」という感覚と、現実の手続きの間には大きなギャップがあるのです。





非関税障壁が物流コストを押し上げる


関税率が変わらなくても、コストは上がります。その要因が「非関税障壁(NTB)」です。

輸入ライセンス、数量制限、事前認証、ラベル規制、環境基準――これらは表向き「正当な規制」ですが、実務的には通関遅延、追加書類、現地対応の手間として企業に降りかかります。

OECDの報告によれば、こうした規制対応コストは企業によっては輸出コスト全体の10〜15%に達するとされています。展示会出展においても、この傾向は例外ではありません。

特に厄介なのは、これらの規制が「国ごと」「展示会ごと」に異なることです。前回出展した国の手続きが、今回も通用するとは限りません。




オフィシャルフォワーダー制度という「縛り」


多くの国際展示会では、主催者が指定する「オフィシャルフォワーダー」を通じてのみ搬入出が認められています。これは展示会場の混雑を避け、安全を確保するための仕組みですが、出展企業にとっては選択肢が限られることを意味します。


オフィシャルフォワーダーとの調整、料金交渉、搬入スケジュールの確認――これらはすべて出展企業側で対応しなければなりません。しかし、言語の壁、時差、商習慣の違いが、スムーズなコミュニケーションを阻むことも少なくありません。


さらに、現地の作業会社、会場管理者、主催者――複数の関係者が絡む中で、「誰が何を担当するのか」を明確にしておかないと、当日のトラブルに直結します。



デジタル規制が展示会ビジネスにも波及する


展示会では、製品だけでなく「データ」も扱います。デモ機器のソフトウェア、顧客情報、プレゼンテーション資料――これらすべてがデジタル規制の対象になりつつあります。

データローカライゼーション法や技術輸出規制は、国によって大きく異なります。展示品に組み込まれたソフトウェアが「技術輸出」とみなされるケースもあり、事前の確認が不可欠です。


特に米国や中国では、AI技術や暗号化技術の輸出入に厳格な制限があります。「展示するだけだから大丈夫」という思い込みが、現地でのトラブルを招くリスクがあるのです。



現場を知る専門パートナーの価値


海外展示会の成功は、「製品の魅力」だけでは決まりません。むしろ、会場に確実に製品を届け、展示期間中のトラブルを最小限に抑える――この「裏側の安定性」が、出展の成否を左右します。


複雑化する規制、各国独自の商習慣、オフィシャルフォワーダーとの調整、現地作業会社との連携――これらすべてを社内だけで完結させるのは、大企業であっても容易ではありません。


展示会物流に精通したパートナーは、単なる「運送業者」ではありません。彼らは規制動向を把握し、現地のネットワークを持ち、トラブル時には即座に対応できる「橋渡し役」です。この存在の有無が、出展企業の安心感を大きく変えます。



「見えないコスト」を可視化する時代


2026年の通商環境は、企業に新たな問いを突きつけています。「本当のコストは何か?」と。

関税率の変動は分かりやすい。しかし、書類対応の手間、規制確認の時間、現地調整の労力――これらの「見えないコスト」こそが、実は企業の収益性を静かに蝕んでいます。







海外展示会への出展は、もはや「物を運ぶ」だけの話ではありません。規制を理解し、リスクを管理し、現地とつながる――この一連のプロセス全体を、戦略的に設計する必要があるのです。




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参考資料:

OECD Trade Policy Papers (2023–2024) | WTO World Trade Report 2024 | World Bank Global Value Chain Development Report 2023 | International Trade Centre SME Competitiveness Outlook 2024

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