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リスクを見極める「 ゲートキーパー」ACL

執筆者の写真: Banana MELON  PacificBanana MELON Pacific


「ACL(Advanced Cargo Information)」は、国際貿易において貨物が出荷される前に、輸入国の税関に貨物の情報を事前に提供するためのシステムです。このシステムは、コンプライアンスの強化、セキュリティリスクの軽減、貿易の透明性の向上を目的として、多くの国が採用しています。特にテロ防止や不正輸入の防止を強化するために導入されました。ACLに関連する規制や手続きは国によって異なりますが、ここではACLの概要、なぜ導入されたか、どのように機能するかについて詳しく説明します。


1. ACLの概要(Advanced Cargo Information)


ACLとは、Advanced Cargo Informationの略で、貨物情報を輸出者が事前に税関に報告するためのシステムです。これは特に、船積みの際に発行されるB/L(Bill of Lading:船荷証券)の記載内容を元にして、輸入国の税関や関係当局に提供される情報です。ACLには、貨物の詳細、出荷先、輸送経路、輸送手段などの重要なデータが含まれ、貨物のリスクを事前に評価するために使われます。


2. ACLの導入時期と背景


ACLは、国際的な貨物輸送の安全性と透明性を強化するために、2000年代初頭に国際貿易における重要な規制として採用され始めました。特に、2001年のアメリカ同時多発テロ事件(9/11)を契機に、国際的なテロ対策として物流のセキュリティが強化されました。この背景から、アメリカをはじめとする多くの国が、貨物の事前情報を受け取ってリスク評価を行うための制度を導入しました。


アメリカの24時間ルール(24-Hour Rule)


アメリカ合衆国では、2002年に「24時間ルール」が導入され、船舶に積み込まれる貨物の情報を少なくとも24時間前にアメリカの税関に通知することが義務付けられました。これにより、アメリカへの輸入貨物に対する事前審査が可能になりました。


EUのICS(Import Control System)


欧州連合(EU)では、2011年1月1日から「ICS(Import Control System)」が導入され、EUに輸入される全ての貨物に対して事前申告が求められるようになりました。これは、輸入国のセキュリティを確保するための制度です。


日本の海上貨物事前報告制度


日本では、2014年3月に「海上貨物事前報告制度」が導入されました。これにより、日本に到着する48時間前までに輸入貨物の情報を税関に提出することが義務付けられています。


3. ACLに必要なデータ(B/L記載内容)


ACLでは、主にB/L(船荷証券)に基づいた貨物の詳細な情報が報告されます。報告すべき主な項目は次の通りです。


- Shipper(荷主): 貨物の出荷元。

- Consignee(荷受人): 貨物の受取人。

- Notify Party(通知先): 貨物到着時の通知先。

- Vessel Name and Voyage No.(船名と航海番号): 貨物を運ぶ船の名前とその航海番号。

- Port of Loading(積出港): 貨物が積み込まれた港。

- Port of Discharge(揚げ港): 貨物が降ろされる予定の港。

- Description of Goods(貨物内容): 輸送される貨物の詳細な内容。

- HS Code(関税分類コード): 輸入される貨物に適用される関税分類コード。

- Quantity and Weight(数量と重量): 貨物の数量および総重量。

- Container Number(コンテナ番号): 貨物が収容されたコンテナの識別番号。

- Seal Number(封印番号): コンテナに付けられたシール番号。


4. ACLの重要性と目的


ACLが導入された目的は、貨物輸送の安全性を高め、貿易におけるリスクを軽減することです。ACLを通じて、各国の税関は船舶が到着する前に貨物の情報を確認し、リスクのある貨物や危険物が含まれていないかを評価します。これにより、不正輸入やテロリズムに対する防止策が強化されるだけでなく、密輸や規制違反の貨物を特定することが可能になります。


- セキュリティの向上: ACLにより、税関は貨物の詳細を事前に把握でき、到着前に疑わしい貨物を調査・検査するための時間を確保できます。

- 効率的な通関手続き**: 事前に情報が提供されているため、輸入貨物の通関手続きがスムーズに行われ、貿易の流れが効率化されます。


5. なぜACLが重要なのか


ACLは、単なる税関手続きの一環ではなく、国際物流の安全性を確保するための重要なツールです。特に、世界的な貿易量の増加とともに、リスク管理の必要性が高まっているため、輸送される貨物の事前情報を通じて適切な対応を取ることが求められています。


また、ACLは単にセキュリティだけでなく、貿易の透明性や正確性を高める役割も果たしています。輸出者と輸入者、そして船会社やフォワーダーが密接に連携し、正確な情報を共有することによって、誤った情報によるトラブルを未然に防ぐことができます。


結論


ACLは、国際貿易の安全性と効率性を確保するために不可欠な制度であり、テロ対策や不正輸入の防止を強化するために導入されました。B/Lの内容を元にした正確な情報提供が求められ、輸入国の税関がリスク評価を行うための重要な役割を果たしています。各国によって異なるルールや規制が存在するため、ACLの要求事項を正確に理解し、適切な手続きを行うことが国際物流において非常に重要です。



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